量子ビーム分析アライアンス 2024年度インターンシップ体験記

弘前大学大学院 理工学研究科理工学専攻 物質創成科学コース

博士前期課程2年 難波 恵汰

私は2024年の10月1日から12月20日までの約3ヶ月、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)においてインターンシップ生として貴重な実習の機会をいただきました。

インターンシップ中は、産業界の方々との共同実験で使用する小角中性子散乱(SANS)用セルの設計や中性子ラジオグラフィ実験の準備、産学連携推進室のホームページ案の制作、CROSSが主催するワークショップの支援など、多岐に渡る業務に取り組みました。これらの活動を通じて、研究や情報の発信において「相手に受け取っていただく」という視点が重要であることを強く実感しました。今後は、自身の研究を発信する際に、情報の受け手を具体的に想像し、効果的な伝達方法を意識していきたいと考えています。

また、J-PARC研究棟において実験を行うこともできました。私は現在、多量の水を含む高い生体適合性と優れた外部刺激応答性を有する高分子ハイドロゲルの研究に取り組んでいます。ハイドロゲルは溶媒である軽水を重水に置き換え、中性子線を用いて観察することで、ゲル中の高分子が形成する構造の評価が可能であることが知られています。残念ながら、今回の実習期間中は施設の運転スケジュールの変更により、当初予定していた中性子実験の実現は叶いませんでした。しかし、その代替として、動的光散乱法を用いた高分子ダイナミクスの測定や、小角X線散乱法を用いた高分子構造の評価に取り組みました。これらの実験を通じて、中性子実験につながる重要な経験とデータを得ることができました。

 インターンシップの最終月には報告会が開催され、これまでの実習内容について発表しました。その際、CROSS職員の皆様から多くの質問やコメントをいただき、活発な議論を通じて自身の研究に対する理解が一層深まりました。この経験をもとに、今後はSANSを用いてハイドロゲルの側鎖の長さや末端官能基の変化が構造に及ぼす影響を探究するとともに、重水と軽水の比率を調整するなど、実験手法の工夫も取り入れて自身の研究を進めていきたいと考えています。

最後になりましたが、本実習を受け入れてくださいました柴山充弘センター長はじめ、指導していただいた三田一樹氏ならびに新事業展開部を始めご関係の皆様、J-PARC研究棟での実験にご協力いただいた高田慎一氏やご関係の皆様に深く感謝いたします。また、研究室でご指導いただいている呉羽拓真助教(弘前大学)にCROSSでの貴重な経験の機会をいただきましたこと深く感謝申し上げます。 

ンターンシップ最終報告会の様子